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この記事を読んでわかること
- 無肥料無農薬不耕起の田んぼの様子
- 不耕起とは
- お米が成長する様子
- 田んぼオーナーについて
2022年の初めにSNSで「田んぼオーナー」募集の記事を見つけました。
自宅の庭やプランターで少々野菜を作っていますが、お米は田んぼを持っていないと作れないと思っていました。
しかし「田んぼオーナー」になると、お米作りを体験できると知り、今回募集の田んぼが自宅から通える距離にあったので応募しました。
今回お世話になった田んぼは、耕作放棄された農地を荒地にしない取り組みをしている農家さんが無肥料無農薬不耕起栽培という方法でお米を作っています。
種まきに始まり、田植え、草取り、生育観察、稲刈り、脱穀、籾すりまで一通りのことを農家さんの指導の下で体験。記録をこの記事にまとめました。
私が体験した無肥料無農薬不耕起栽培でお米を作った様子を写真、感想も含めてのせています。
「田んぼオーナー」や「不耕起栽培」について知りたい方に向けて説明も書いてあります。気になる方は「田んぼオーナー」、「不耕起栽培」をクリックしてみてください。
この記事はこんな方におすすめ
- 自分でお米を育ててみたい
- お米の成長過程を知りたい
- 無肥料無農薬栽培に興味関心がある
- 農業体験に興味がある
無肥料無農薬、不耕起でお米栽培
不耕起とは、農地を耕さないで種をまいたり、苗を植える農法です。「耕さない」というのは、一般に農業を営む人にとっては非常識なのですが、自然栽培(農薬、化学肥料を使わない栽培法)する農家さんにとっては、一つの農法です。
種まき
お米の種は、籾がついたままのお米です。
種まきは、籾つきの米粒をセルトレイという小さく区切られたトレイに土と一緒に入れて水につけ、田植えをするまでこの中で苗として育てます。
作業は田んぼではなく、農家さんの作業小屋で籾付きの米を土と一緒にセルトレイにぎゅっと押し込んで、それを水につけて給水させるまでの作業でした。
この日が農家さんと会う初日で、他のオーナーさんとも初対面。
事前に特に説明もなかったので、何もわからないまま、緊張しながら作業していたので、写真を撮る余裕がありませんでした。
除草、落ち葉まき
この日、初めて田んぼに来ました。広さは1人、90㎡。
不耕起栽培なので、田んぼを耕す代わりに農家さんが用意してくれた落ち葉を自分の区画にまきます。
落ち葉をまくのは、田んぼに栄養を与えるためと雑草の発芽を防ぐため。
次回はいよいよ田植え。
農家さんから機械を使わず手作業で植えると聞いて、体力に自信のない私は帰宅して息子に手伝いをお願いすることにしました。
田植え
田植え当日、農作業未経験の息子も、興味を持って手助けに来てくれました。
田植えは、手で苗を植えていきます。
種まきの時にセルトレイに植えた苗は30㎝位に大きく育っていました。
これをトレイから抜き取って植えます。
農家さんお手製の大きなフォークのような道具を地面に突き刺して穴をあけ、その穴に苗を植えこんでいきます。
田植えより、穴あけ作業が重労働なのですが、穴を等間隔にしておかないと後々の作業に支障が出るのですが、この時はまだわからず、後で面倒なことになりました。
隣の田んぼのオーナーさんと励ましあいながら、1日かけて作業しました。
きつい作業ではありましたが、私たち親子にとっては非日常の体験で心身ともにリフレッシュできました。息子も田植え体験を楽しむとともに、食べるものを作ってくれた人への感謝の気持ちを改めて感じたようです。
草取り、ヒエとり
田植えから3週間後、5週間後に草取りに行きました。
主に取る草は、ヒエ。
ヒエは稲と同じイネ科なので、小さいうちはよく似ていますが、だんだんと稲より大きく育ってしまうので、お米農家さんにとっては困った存在。
稲に日光と栄養が十分に届くようにするためヒエは刈り取ります。
この時、根から抜くのでなく鎌を使って根は残します。
他にも色々な草が生えていたので、それも刈り取ります。
抜き取らないと、またはえてきてしまいますが、土の中の状態を維持するために根は抜きません。これも不耕起栽培の特徴です。
刈り取った草は、畔に放置。
初め初心者のオーナー達はヒエを雑草というより栄養的に優れた雑穀で、刈り取ることに抵抗がありました。
しかしその後、稲より大きく育つヒエを見て、農家さんの言うように田んぼの栄養を奪ってしまう大敵であることがわかり、容赦なく刈り取るようになりました。
ここで田植えの時に、等間隔で苗を植えていないと大きな問題が発生します。
ヒエと稲はどちらもイネ科で見た目がそっくりなので、区別が難しい。
刈り取るときに等間隔にはえている稲を残し、すき間から生えているヒエを除草します。
田植えの時に間隔がズレると、稲とヒエの区別に時間がかかるし、せっかく植えた稲を刈り取ってしまいます。何事も最初が肝心ですね。
生育観察
生育観察では、稲の身長と1本の苗の茎の本数を数えます。
稲の苗は成長すると、分げつ(ぶんげつ)といって一本の苗から新しい枝が出てきます。
枝が成長して、それぞれに穂をつけるので、たくさん分げつすれば収穫するお米の量が増えます。農家さんは、この時に収穫量の予想をします。
この観察を田植えから3カ月前後に2回ほど行いました。
稲の身長は1メートル位に成長していて、稲穂もできていてうれしかったです。
稲刈り、杭掛け、天日干し
稲刈りは、稲刈り機を使いました。
私たちが使ったのは、バインダーというタイプの稲刈り機。
これは稲を刈り、刈った稲を縄でまとめて束にする作業もしてくれます。
この稲の束を杭にかけて天日干しをしていきます。
これまでは各自の区画で、各々が作業していましたが、この日から参加者全員で分担作業。
稲刈りの手順は、
- バインダーで稲を刈る
- 稲を干すための杭を作る
- 杭にかけて稲を干す
作業はオーナー全員で手分けしました。
バインダーで稲を刈る作業は人気で、自分の区画の稲刈りをしました。
稲刈りの時も田植えが等間隔になっていると、楽に刈り取れますが、曲がっていたり、ゆがんでいると刈り残しがでてしまい、後から鎌で刈り、手間が増えます。
杭にかけた稲の束は、2週間くらい干します。
これを天日干しと言います。
お米の粒は、水分量が15%以下になると割れやすくなったり、味も落ちるそうなので、農家さんは2週間の間に水分量を計ります。(水分量をはかる機械があるそうです)
天日干しの期間中に雨が降ったら心配ですよね。実は籾には水をはじく特性があるので、少しの雨なら問題ありません。籾は天然の撥水加工がされています、すごいですね。
稲刈りから天日干しの作業をして感じたのは、この一連の作業を1人でするのは大変だということ。助け合うことで作業がはかどります。
これまでは自分の区画の中で各自作業していましたが、この日にオーナー同士一緒に作業して仲良くなりました。
現在ではご近所同士のお付き合いが減っていますが、お米作りは人手が必要で、ご近所の助け合いはとても大事だなあと思いながら作業していました。
現在は高齢化と農業人口の減少で、1人でも作業ができるように機械化されています。
コンバインという機械で、稲刈り、脱穀、稲わらの処理などすべて一台で処理できます。
乾燥も天日干しではなく、乾燥機を使うので作業は楽になります。
脱穀、わら片付け
脱穀とは、稲わらと籾を分ける作業。これも脱穀機を使います。
2週間後、天日干しの稲わらを杭からはずして脱穀機にかけ、稲の束と籾の付いたお米に分けて、お米は袋詰め。
籾の付いた米は、もみすりをして玄米になります。(やっと食べられる状態まできました。)
残った稲わらは畑の霜よけや来季の肥料として使います。
これで田んぼでの作業がすべて終わりになりました。
もみすり
籾がついたままのお米を籾すり機で玄米にします。
これを精米すると、白米、分つき米、胚芽米、胚芽米などおなじみの状態になり、家で炊いて食べることができます。
籾殻がついたままのお米は、長期保存しても味が落ちないそうです。
籾を取り去ってしまうと酸化が始まって味も落ちてしまうそう。
籾は、撥水加工もあるし、籾の中のお米を新鮮な状態に保つなど、大切な役割があるのを知りました。
持ち帰って炊いたご飯は、みずみずしくておいしかったです。
初心者でも収穫できる「田んぼオーナー」
「田んぼオーナー」とは、お金を払って農家さんから区画割された土地を借り、そこで収穫したお米をもらえるしくみです。
オーナーがどの程度作業に参加するかは、農家さんによって違います。
たとえば
- 稲の栽培、田んぼの管理は農家さんにすべてお任せで、収穫したお米を受取るだけ。
- 体験は田植えと稲刈りだけ。田んぼの様子をSNS等を利用して農家さんが伝えてくれる。またいつでも田んぼを見に行けるなど。
- 種まきからすべての工程を農家さんの指導で体験する。
農家さんの事情等により「田んぼオーナー」ができることも違うので、田んぼオーナーになる時は活動内容を確認しましょう。
田んぼオーナーに応募する前に確認したい3点
お米作りは大変な作業もありますが、食べ物をいただくありがたさを身をもって経験できる機会なので、子ども達に経験してほしいと思いました。そしてその経験が楽しい思い出にもなるように、確認すると良い点を3つお伝えします。
田んぼに通う回数と自宅から田んぼまでのアクセスを確認
自宅から田んぼが遠くても、田植えと稲刈りの参加だけならばお出かけ気分で行けます。
しかし、作業に通う回数が多いと、往復にかかる時間も交通費もかかります。
車がない場合は、電車やバス、タクシーを使います。
駅から田んぼまで徒歩で行けるのか?バスかタクシーを使うのかなど。
自宅から田んぼまでのかかる時間と交通手段を確認しておきましょう。
特に夏場の除草は、朝早い時間や、夕方になります。
電車やバスの時刻表も確認が必要です。
虫嫌い、生き物こわい人には難しい
有機栽培や無農薬栽培の田んぼ場合、農薬を使用しないので、虫やクモ、トカゲ、カエルなど様々な生き物が田んぼにいます。(私はヘビにも遭遇しました!)
虫や爬虫類を気持ち悪いと思う人は、生き物がいないか気になって作業ができないし、楽しくありませんね。
荷物が多い
農作業用するので荷物が多いです。公共交通機関を使う場合は荷物を持って子連れの移動は大変です。
素足で田んぼに入るところもありますが、農作業用の長靴や衣服に着替えもいるので、荷物が多くなります。
私は電車で通っていたので、田んぼの最寄り駅のトイレで着替えをしました。
田んぼで作業中、トイレは近所のコンビニを借りました。トイレ事情もチェック項目の1つですね。
不耕起栽培とは、農地を耕さずに種や苗を植える栽培方法
不耕起とは、地面を耕さず種をまいたり苗を植えたりする農法
栽培する土地の状態や農家さんによってやり方に違いはありますが、種をまく、苗を植える前に土を掘り起こしません。なぜなら土の中では、微生物や細菌類が元気に活動しているからです。
植物は太陽の光と水だけでなく、土の中にいる微生物や細菌と助け合いながら成長しています。それを利用して栽培するのが、無肥料無農薬、不耕起栽培です。
農薬も肥料もいらない、耕す手間もいらない。というのは、農家さんにとって経費も労働力も減って、良い点ばかりだと思います。
しかし、不耕起栽培の農家さんはわずかです。(若い新規就農者で不耕起栽培を始める人は増えています。)
不耕起栽培が普及しない理由2つは、マニュアルがないことと常識の壁
マニュアルがない
慣行栽培は、農薬をまく回数や量、肥料を与える量や回数が決まっているのでわかりやすいのです。
不耕起栽培は、その土地の土の状態によって栽培方法が変わります。
その土地の成分を知るところから始めなくてはなりません。
以前に農薬や化学肥料を使っていた土地には、微生物や菌類がいないので、土の状態を変えるところから始めます。
野菜の種類によって、よく育つ野菜もあれば育たない野菜もあり、農家さんの知識と経験が必要になります。
常識を変えられない
今まで「耕す」ことが当たり前だった農家さんにとって、「耕さない」のは常識外れ、大きく農法を変えることになるので、決断が必要になります。
誰でも今まで当たり前にしていたことを「やらない」というのは、戸惑います。
会社勤めの人も、今までは「通勤」が当たり前でしたが、現在は「在宅勤務」も増えました。
「在宅勤務」するために家にWi-Fiをひいたり、仕事をするスペースを確保するなど今までの生活から変わりました。
会社の指示ではなく、自らの考えで仕事のやり方を変えるのは、決断力が必要ですね。
まとめ:田んぼオーナーになった感想
4月の初旬の種まきから始まり、脱穀は10月下旬。
約半年の間、月に1∼2回田んぼに通いました。
種まきも田植えも初めての体験。最初にお手本を見て、説明も聞いてからやるのですが、予想以上に難しくて大変でした。
田植え後は稲の成長が楽しみで、自分が植えた苗が稲になり稲穂が色づいていていくのを見て感動しました。
田んぼに入って無心に作業している時は、なぜか疲れを感じません。
作業後は、体も気持ちもスッキリして気分転換になったようです。
同時に農業の厳しさ、肉体的にきつかったり、台風が発生したり、ヒョウが降ったニュースを見ると稲のことが心配で見に行きたくなります。
お米の栽培体験をして、生産者から始まり手元に届くまでに様々な人たちのおかげで食べ物が届けられていることに、改めて気がつき感謝の気持ちが強くなりました。
そして2023年も引き続き、同じ田んぼでオーナーをすることにしました。2回目は新しい気付きやできることも増えると思い、今からとても楽しみにしています。
現在、農業人口の減少と耕作放棄地の増加の問題がありますが、これらの問題を不耕起栽培の田んぼオーナー制度が少しでも役に立つと良いなと思っています。